― 口臭という、見えにくいサイン ―
人は、自分のにおいには慣れてしまいます。
けれど、ふとした瞬間に気づくことがあります。
マスクの中。
朝、目覚めたとき。
誰かと近くで話したあと。
「もしかして、口が臭うのではないか」
その不安は、痛みよりも人を深く黙らせます。
口臭の原因は、ひとつではありません。
けれど、最も多いのは、やはり口の中にあります。
1.お口の中の原因(むし歯、歯周病、修復物、根の感染)
むし歯
ある方は、「奥歯にいつも食べ物が詰まる」と来院されました。
痛みではない。でも、なんとなく嫌なにおいがする気がする。
診てみると、大きなむし歯がありました。
歯にできた穴は、食べ物の“隠れ場所”になります。
そこに食べ物が残り、時間とともに腐敗し、細菌が増えていく。
大きなむし歯ほど、においが強くなることがあります。
対応は、原因を取り除くこと。
むし歯を治療し、
食べ物が停滞しない環境に戻すことです。
歯周病
別の方は、「むし歯だと思って来ました」と。
けれど問題は、歯ではなく歯ぐきでした。
赤く腫れた歯ぐき。触れると出血する。
歯周ポケットの奥には、長くとどまった汚れ。
歯周病では、細菌が酸素の少ない場所で増え、
硫黄を含むガスを生みます。
いわゆる、腐った卵のようなにおい。
膿があれば、さらに強い悪臭になります。
対応は、歯周治療。歯ぐきの奥の環境を整え、
汚れの停滞をなくすことです。
合っていない修復物
「昔入れた被せ物のあたりが臭う気がする」そんな方もいます。
クラウンの段差。詰め物のすき間。古くなった接着剤。
ほんのわずかな不適合でも、
そこは細菌の住みかになります。
外からは見えなくても、
内側で食べ物がとどまり、腐敗していることがあります。
対応は、合っていない修復物の見直しです。
根の中の感染
「歯は治療しているのに臭う」
そんなとき、歯の根の奥に感染が残っていることがあります。
根の中の感染や膿は、
独特の強い悪臭を伴います。
対応は、根の治療の再評価です。
2.お口の環境による原因(乾燥、舌苔、義歯)
もうひとつ多いのが、“乾燥”です。
口は、本来、唾液によって守られています。
唾液は洗い流し、
細菌の増えすぎを抑える。唾液は天然の洗口液。
けれど、加齢、口呼吸、脱水、薬の影響、緊張
こうしたことで唾液が減ると、
口の中は一気ににおいやすくなります。
朝の口臭が強いのは、
睡眠中に唾液が減るからです。
対応は、原因への対処。
水分、口呼吸の改善、薬の確認などです。
舌も見逃せません。
舌の表面に白くつく舌苔。(舌の汚れ(舌苔:ぜったい))
そこには細菌や食べかすが集まり、
においの発生源になることがあります。
ただし、強くこすりすぎるのは逆効果です。
専用の舌ブラシを使い、優しくなでる程度にする。
義歯
義歯もまた、見えないにおいの温床に、
なることがあります。
洗えていない入れ歯には、
細菌、真菌、食べかすが積み重なります。
対応は、毎日の適切な清掃です。
3.お口以外が原因の場合
口の外が原因のこともあります。
副鼻腔炎。いわゆる蓄膿症。鼻水が喉に流れてくる後鼻漏。
扁桃炎。扁桃結石。いわゆる“臭い玉”。
膿や細菌の分解臭が、口臭として感じられることがあります。
胃腸の不調
胃腸の不調が原因で口臭がする、そう思われることもあります。
けれど、一般的には、胃そのものが口臭の主原因であることは多くありません。
ただし、逆流、げっぷ、胃内容の停滞、こうした場合には、
酸っぱいにおいとして感じることがあります。
便秘だけで強い口臭になる、とは一概に言えませんが、
全身状態や食生活の影響として間接的に関わることはあります。
まれに、
糖尿病、腎不全、肝不全、呼吸器感染
など、全身疾患が背景にあることもあります。
甘酸っぱいにおい。アンモニアのようなにおい。
魚のようなにおい。においの質がヒントになることもあります。
口臭は、
単なるエチケットの問題ではありません。
からだから届く、小さなお知らせです。
においを消すことだけを考えるのではなく、
なぜ、そのにおいが生まれているのかを見つけること。
そこに、本当の解決方法があります。
言えなかったひと言の向こうに、
治療すべき原因が隠れていることがあります。
治療した結果、自信を持って笑えるようになり、
食事と会話が楽しくなる。日常の幸せを取り戻す、
私たちはそのお手伝いをします。
まずは相談だけでも大丈夫です。
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